マルゴー (Margaux, Bordeaux) のワイン
気品ある女性的なワインを生産
マルゴー (Margaux) は、オー・メドック (Haut-Medoc) にある 4 つの行政区画名アペラシオンの中で最南に位置し、ぶどう畑は、マルゴー (Margaux)、カントナック (Cantenac)、スーサン (Soussans)、ラバルド (Labarde)、アルザック (Arsac) の5村に跨っています。
ぶどう畑の総面積は、1,490ha と広く、18~19世紀に建設された華やかな城館がぶどう畑の中に点在する、ボルドー特有な美しい景観が広がっています。
マルゴーは、繊細さと気品を備えたワインが生産され、オー・メドックの中でも「最も女性的」と評価されています。
マルゴーには、メドック第一級格付けのシャトー・マルゴーを筆頭に、格付けに入る21のシャトーがあり、マルゴー全体の生産量の内、70%を生産しています。
マルゴーは、生産者やヴィンテージによる品質や味わいの差から、長い間、オー・メドックにある4つの行政区画アペラシオンの中では、ポイヤック (Pauillac)、サン・テステフ (Saint-Estephe)、サン・ジュリアン (Saint-Julien) の後を追いかける存在でしたが、近年は、生産者の取り組みによって、品質のばらつきが少なくなり、差が縮まっていると言われています。
生産者によるぶどう品種と区画の組み合わせは多彩、マルゴーのワインは生産者ごと様々な個性を持つ!!
フィネス、きめ細かさ、個性
マルゴーの土壌は、オー・メドックに特徴的な砂利層が一番少なく、粘土の含有量も低く、痩せた土壌な為、ぶどう以外の作物には理想的とは言い難いものの、特にカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培に最適です。
マルゴーの痩せた土壌で育つカベルネ・ソーヴィニヨンは、根を地中深くまで伸ばし、より繊細な重みと質感を持ち、骨格はしっかりしているが、並外れたフィネスときめ細かいタンニンを持っています。
また、マルゴーは、石灰岩、砂、粘土の土壌が広がっている地域もあり、砂利層の少ない地域では、主にメルローが植えられています。
その結果、マルゴーは、サン・テステフ、ポイヤック、サン・ジュリアンなどと比べてカベルネ・ソーヴィニヨンの比率が低く、殆どのシャトーが複数の村にある様々な土壌の畑を所有していることから、生産者によるぶどう品種や区画の組み合わせは、多彩になっています。
マルゴーのワインは、繊細で並外れたフィネスときめ細かいタンニンを特徴としながらも、土壌・ぶどう品種・区画の多彩な組み合わせに、生産者ごと異なる醸造技術が加わり、生産されるワインは、様々な個性を備えています。
偉大な生産者、マルゴーとパルメ
マルゴーの代表的なシャトーは、メドック第一級格付けのシャトー・マルゴー (Chateau Margaux) です。
シャトー・マルゴーのワインは、「ワインの女王」「ボルドーの宝石」と形容され、世界中から称賛されています。
「そのワインは、アロマのエレガントさと果実の凝縮感、純粋さを結合させている。それは、均整の取れた美しいワインで、口に含むとその香りと調和で感覚を覚醒させる。」 (ヒュー・ジョンソン)、「蘇ったマルゴーの特徴は、豪華な豊かさ、熟したブラックカント、スパイシーなヴァニラのオークっぽさ、スミレなどの深みのある多面的なブーケを持つスタイルである。今では、その色や豊かさ、ボディ・タンニンのどれをとっても、1977 年以前につくられていたワインに比べて見違えるほど充実している。」 (R. パーカー) と評価されています。
なお、シャトー・マルゴーは、白ワイン「パヴィヨン・ブラン・デュ・シャトー・マルゴー」も造っています。
ソーヴィニヨン・ブランだけを植えた 12 ha の畑から生産される極上白ワインは、「このメドック最高級の白ワインは、キレが良く、フルーティーで、ハーブとオークの香りがそこはかとなく漂う。」 (R. パーカー) と評価されています。
また、シャトー・パルメ (Chateau Palmer) は、メドック格付けは第三級ながら、実際には第二級格付けを凌ぐ評価を獲得しています。
実際、「パルメは、公式には、三級シャトーだが、ワインは第一級と第二級の間の価格で売られており、それは、ボルドーのワイン商や海外の輸入業者、世界中の消費者がこのワインに高い敬意を払っている証拠である。」 (R. パーカー) と言われています。
パルメは、1950 年代~1970 年代は、シャトー・マルゴーの評価を凌いでいたシャトーであり、現在でも「パルメの最近の出来栄えには、一級シャトーへの野望が表れている。」 (R. パーカー) と言われています。
そして、「シャトー・パルメの真髄は、その芳醇さと、素晴らしくきめ細かいタンニンに由来する触感の質である。」 (ヒュー・ジョンソン)、「パルメのワインはどの一級シャトーにも劣らない深遠なワインになり得る。人の心を掴んで離さないあの芳香は、マルゴーの真髄である。」 (R. パーカー) と言われ、パルメは、傑出したワインを生み出す偉大なシャトーと評価されています。
卓越した生産者一覧
ワイン評論家のヒュー・ジョンソン氏は、マルゴーの優れた生産者として、以下のシャトーを紹介しています。
・マルゴー (Margaux)
「マルゴーのワインは、まさにテロワールの産物であり、上品さと古典主義を備えた偉大なワインである。洗練された芳香が鼻腔を漂い、それは繊細かつ深奥である。鼻をくすぐるようなスパイスも感じられる。口に含むと豊かで凝縮されているが、きめ細かなタンニンの骨格でバランスが保たれている。後味は非常に新鮮で、長く持続し、新鮮である。」
・パルメ (Palmer)
「シャトー・パルメのワインは、芳醇でまろやか、官能的で精妙、長く持続する味わい、タンニンは驚くほどきめ細かく、持続する。超絶的なバランスを持つ荘厳なワインである。また、時間と共に強まるその芳香は秀逸である。メルローの割合が高いことも大きな要因である。」
・ローザン・セグラ (Rauzan-Segla)
「バランスと飲みやすさが、彼らのワインの大前提であり、それゆえ、ローザン・セグラに関しては、過度ということはめったにない。ローザン・セグラの真髄は、芳香、味わいの長さ、バランス、触感のしなやかさである。ヴィンテージの特徴が明確に出ているが、前よりも一貫性が保たれ、質は今後ますます良くなるばかりだ。」
・ブラーヌ・カントナック (Brane-Cantenac)
「いま心に浮かんでくるのは、エレガンスと芳醇という 2 つの言葉で、特にアロマと骨格に関しては、ピッタリくる。アンリ・リュルトンは、徐々に凝縮感と触感の質を高めており、同時にワインの信頼性を高いものにしている。」
・ジスクール (Giscours)
「苦境に立たされていたシャトーがいかに再生し、ワインの質が飛躍的に上昇したかを描き出す最高の例の一つがシャトー・ジスクールである。ジスクールは、1995 年、オランダ人実業家のアルバダ・イェルヘスマによって買収された。ジスクールというワインを復活させるというアルバダ・イェルヘスマの強い決意は揺らぐことなく、彼は今も莫大な額の投資を続けている。」
・ディッサン (Issan)
「ディッサンは、今、本物のマルゴーとして蘇りつつある。ワインは香り高く、洗練され、しなやかな触感と、現代的な果実味の凝縮感がある。『エレガンスとフィネスを追求しているが、骨格の確かさと凝縮感にも磨きをかけている。』と、エマニュエル・クリューズは言う。」