ポマール (Pommard) の南、ムルソー (Meursault) の北に位置するヴォルネイは、ブルゴーニュの典型的な小村で、14世紀に建設された「ぶどう園の聖母教会」を意味するノートルダム・デ・ヴィーニュ教会 (Notre-Dane des Vignes) を中心に、数十件のぶどう栽培農家やドメーヌの集まる集落があり、その周囲にぶどう畑が広がっています。
ヴォルネイは、コート・ド・ボーヌ地区において、繊細で女性的な赤ワインを産出する銘醸地として知られ、Grand Cru (特級畑) こそ無いものの、30区画 (クリマ) もの1er Cru (一級畑) を擁する人気・評価の高いアペラシオンです。

ヴォルネイは、赤ワインのみを生産する村です。
ヴォルネイの赤ワインは、繊細でスミレの香りを纏い、フィネス・生気・香りが非常に高いことから、しばしば「ブルゴーニュの赤ワインのなかで最も女性的で、コート・ドールの中で最も優雅なワインのひとつ」 (フランスAOCワイン辞典) と言われています。

また、ヴォルネイのワインは、率直な味わいで、かなり早い時期から味わいが開花すると言われています。
長期熟成を待たずとも、比較的早いうちからエレガントでフィネス溢れる味わいを楽しむことができることもヴォルネイの魅力です。

ヴォルネイの 1er Cru (一級畑) で評価の高い区画 (クリマ) として、「タイユピエ」 (Taillepieds)、「シャンパン」 (Champans)、「レ・カイユレ」 (Le Cailleret)、「クロ・デ・シェーヌ」 (Clos des Chenes) などが挙げられます。
これら区画のワイン評論家ヒュー・ジョンソン氏及びワイナート誌の評価は以下の通りです。

「タイユピエ」 (Taillepieds)
「魅惑的な『ヴォルネイのアロマ』を最も強く感じさせてくれる。」「タンニンはキメ細かくエレガント。清涼感もあって長い熟成に耐える。」

「シャンパン」(Champans)
「タイユピエと並んで魅惑的な『ヴォルネイのアロマ』を最も強く感じさせてくれる。」「ワインはエレガントで飲み飽きしない。」

「レ・カイユレ」 (Les Cailleret)
「ワインの色は濃く、黒い果実のアロマや燻した香り。ややスパイシーでふっくらと豊満。コート・ド・ボーヌを代表する 1er Cru (一級畑) のひとつ。」

「クロ・デ・シェーヌ」 (Clos des Chenes)
「私は、クロ・デ・シェーヌが好きだ。特に雄大な果実の芳醇さを感じる。」「香りから濃く、力強い。男性的でタンニンもがっちりしているが、キメが細かくエレガントでもある。開くには最低 8 年を擁する。」

また、単独所有者畑 (モノポール) の 1er Cru (一級畑) も幾つかあり、とりわけ「クロ・ド・ラ・ブス・ドール」 (Clos de la Bousse d’Or)、「クロ・デ・デュック」 (Clos des Ducs) が代表格と言え、「小さな宝石のようで、見つけにくく、価格も高い。」 (ヒュー・ジョンソン氏) と評価されています。

「クロ・ド・ラ・ブス・ドール」 (Clos de la Bousse d’Or )
「プス・ドール (Domaine de la Poussse d‘Or) のモノポールでフラグシップである。色調は、深いルビー色で、黒い果実の複雑なアロマがある。タンニンは引き締まっているが硬くない。」

「クロ・デ・デュック」 (Clos des Ducs)
「マルキ・ダンジェルヴィーユ (Domaine Marquis d’Angerville) のモノポールでフラグシップである。引き締まっていながらエレガント。ストラクチャーは複雑でハーモニーがある。真価を発揮するのに 15 年を要する。」

他にも高評価な単独所有者畑 (モノポール) の 1er Cru (一級畑) として、プス・ドール (Domaine de la Pousse d’Or) が単独所有する「クロ・ドーディニャック」 (Clos d’Audignac) と「クロ・デ・スワッサント・ウーヴレ・アン・アンフォール」(Clos des 60 Ouvees Eleve en Amphore)、ミッシェル・ラファルジュ (Domaine Michel Lafarge) が単独所有する「クロ・デュ・シャトー・デ・デュック」 (Clos du Chateau des Ducs)、バンジャマン・ルルー (Benjamin Leroux) が単独所有する「クロ・ド・ラ・カーヴ・デ・デュック」 (Clos de la Cave des Ducs) などが挙げられます。

ヴォルネイが、赤ワインの産地として評価が高い背景には、ブルゴーニュワインに対して持つ純粋さや優しさ、繊細さといったイメージに、ヴォルネイのワインが合致するからです。
ブルゴーニュワインに純粋さや優しさのイメージを持つ場合、ヴォルネイが最高のワインかもしれません。

「もし、ブルゴーニュワインのことを全く知らず、造り手も、畑のことも、各年のブドウの作柄についても見当がつかないのであれば、コート・ドールのどの村のものよりも『ヴォルネイ』のワインを選ぶのが最も手堅い選択である。」 (マット・クレイマー)

この言葉は、ヴォルネイの特徴を端的に表現しています。
ヴォルネイの造り手たちの水準は高く、また、村の畑の半分以上が1級畑に指定されるなど土壌や日照などぶどう畑の自然条件も恵まれています。
生産者水準の高さ、自然条件の良さ、繊細で優しいワインのスタイル、すなわち、ヴォルネイのワインを選択すれば、飲む人の期待通りに、ブルゴーニュらしい優雅なワインを楽しむことができることを意味しています。

また、中世の時代より、ヴォルネイのワインは評価が高いことで知られています。
歴史上の人物では、フランス王国によるフランス統一と中央集権を進めたルイ11世、歴代のブルゴーニュ公、フランス絶対王政の絶頂期を築いたルイ14世などが愛したワインとして知られています。

とりわけルイ11世は、ヴォルネイのワインを好み、1477年にフランスを統一し、ブルゴーニュ公国からヴォルネイの畑を継承すると、全収穫量を接収して宮廷のワインとして用いるほどでした。
しばしばヴォルネイの地に足を運び、ヴォルネイの村には、今でもルイ11世ゆかりの建物などが残っています。

著名なワイン評論家ヒュー・ジョンソン氏は、素晴らしい造り手として、以下の生産者を紹介しています。

・ミッシェル・ラファルジュ (Domaine Michel Lafarge)
「ミシェルとフレデリックのラファルジュ父子は、ワイン造りの魔法使いと称賛されている。そのワインは、果実味の奥深さで飲む人をくぎ付けにする。」

・マルキ・ダンジェルヴィーユ (Domaine Marquis d’Angerville)
「ジャック・ダンジェルヴィーユは、現代アペラシオン制度の確立に貢献した。クロ・デ・デュックは、完璧な質感とバラの花弁のようなアロマを持つ重層的なワインで、毎年毎年『ヴォルネイ・オブ・ザ・イヤー』の候補に挙げられている。」

・アンリ・ボワイヨ (Domaine Henri Boillot)
「アンリ・ボワイヨのワインは、とても多く、1つを選ぶにはかなり長い時間を要する。ヴォルネイ 1er Cru (一級畑) レ・カイユレは、本当に美しいワインだ。それはゾクゾクするようなワインだ。」

・ジャン・マルク・ブレ (Jean-Marc Bouley)
「このドメーヌのワインを楽しむには、20分ほどデカンティングが必要だ。村名呼称から値段の張る 1er Cru (一級畑) まで、このドメーヌの全てのワインは、称賛に値する。」

・ジョセフ・ヴォワイヨ (Domaine Joseph Voillot)
「ワインは、シルクのような質感、透明性、緻密さ、濃密さが特徴で、10年過ぎたころからようやく、コート・ド・ボーヌで最上のワインを口にしているのがわかるようになる。」