ジュヴレ・シャンベルタン (Gevrey-Chambertin)
![ジュヴレ・シャンベルタンのぶどう畑 (フランス・ブルゴーニュ地方) ジュヴレ・シャンベルタンのぶどう畑 (フランス・ブルゴーニュ地方)](https://www.lesbourgeons.co.jp/pic-labo/GIV1.png)
世界最高のワインを生む自然条件
ジュヴレ・シャンベルタンは、人口 3,000 人の町で、コート・ドールの基準からすれば、かなり大きな町です。
ぶどう畑の総面積は、540 ha で、コート・ドールでは、ムルソーに次ぐ 2 番目の広さがあります。
とりわけ、ジュヴレ・シャンベルタンの Grand Cru (特級畑) 「シャンベルタン」 (Chambertin) は、フランス 19 世紀の英雄、皇帝ナポレオンが必ず遠征先に持っていき、「シャンベルタン」しか飲まないほど溺愛したことで知られています。
これら歴史のエピソードと男性的で力強くエレガントなワインのスタイルから、「シャンベルタン」は、「ブルゴーニュの王」「王者のワイン」と称賛されています。
このように傑出したワインがジュヴレ・シャンベルタンから生み出されるのは、その生い立ちによります。
「疑いもなく、ジュヴレ・シャンベルタンは、世界最高のワイン産地の一つであり、それを造り出しているのは地形である。」 (ヒュー・ジョンソン氏) と言われます。
ジュヴレ・シャンベルタンは、元々は、ミネラルを豊富に含んだ石灰岩の巨大な岩の斜面でした。
その一部に亀裂が生じ、楔を打ち込むように両側に裂け、裂け目が渓谷を形成して、広がりました。
何千年もかけて、渓谷が両岸を削り、ミネラルを豊富に含んだ土砂が扇状に堆積し、その上に砂礫が広がり、沖積扇状地を形成しました。
ジュヴレ・シャンベルタン村は、この沖積扇状地の中心に位置し、土壌は、石灰岩の岩盤に石灰岩に由来する泥灰土と鉄分の多い沖積土が混ざった赤い粘土が浅く堆積し、ミネラルを豊富に含んでいます。
ジュヴレ・シャンベルタンは、ジュヴレ・シャンベルタン村とブロション (Brochon) 村に広がるアペラシオンです。
世界中に名を知られた 9 区画の Grand Cru (特級畑)、26 区画の 1er Cru (1級畑) を擁し、「力強く豊満、コクと厚みがあり、骨格はしっかりとしている。なめらかできめ細かく、豊かな酸がビロードのようにタンニンと溶け合っている。まさに、優れたブルゴーニュの真髄を表す味わいである。」 (フランスAOCワイン辞典) と称賛されています。
とりわけ、ジュヴレ・シャンベルタンの 9 つの Grand Cru (特級畑)は、「シャンベルタン」 (Chambertin)、「シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ」 (Chambertin-Clos-de-Beze) を筆頭に、世界的な名声を誇る傑出した区画であり、誰もが憧れるワインを生み出します。
また、1er Cru (一級畑) も素晴らしいワインを生み出す区画で、生産者による品質の差が大きいものの、しっかりした骨格、きめ細かなテクスチャ、豊かな酸を特徴とする非常に長命なワインが生産されています。
ジュヴレ・シャンベルタンは、赤ワインの生産比率が 100% であり、赤ワインのみを生産する産地です。
ジュヴレ・シャンベルタンのワインは、際立つルビー色から真紅・ガーネット色を呈し、男性的で力強いボディを特徴とし、余韻が長く、熟成により真価を発揮します。
![ジュヴレ・シャンベルタンの位置 ブルゴーニュの地図 ジュヴレ・シャンベルタンの位置 ブルゴーニュの地図](https://www.lesbourgeons.co.jp/pic-labo/GIV5.png)
傑出した特級畑と一級畑
ジュヴレ・シャンベルタンにある 9 区画のGrand Cru (特級畑) は、極上ワインを生み出す区画として、世界最高の評価を得ています。 (以下、ヒュー・ジョンソン氏、ワイナート誌、フランスAOCワイン辞典)
「シャンベルタン」 (Chambertin)
「ルイ 16 世やナポレオンなど歴史上の人物に愛されたクリマ。」「良いボトルは、異次元への世界のパスポートである。」
「20 歳を超えると、『シャンベルタン』の信じがたいような精妙さに圧倒されるはずだ。決して見逃すべきでないワインであり、15 歳になる前に飲むとお金をドブに捨てるようなものだ。」
「シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ」 (Chambertin-Clos-de-Beze)
「7 世紀に『ベーズ修道院』の修道僧によって拓かれた畑である。厚い石灰岩の岩盤上にあり、土壌の色は淡く、ぶどう畑の表土はあまり厚くない。上質の『シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ』は、ミネラルの特別な次元が備わっている。決して見逃すべきではないワインである。」
「シャペル・シャンベルタン」 (Chapelle-Chambertin)
「フランス革命まで『ベーズ修道会』の教会があったことからこの名が付いた。」
「20年以上の熟成ワインは、何人かの無名な造り手が素晴らしいワインを造っていることを確認できた。若い時は禁欲的であるが、忍耐すると報われるワインである。」
「シャルム・シャンベルタン」 (Charmes-Chambertin)
「40 人以上になる多くの所有者がいるため、全てが高い酒質を維持しているとは言い難い。しかし、良い生産者の手になるワインは、実に素晴らしく、質感と濃密感は、他のどのワインにも引けを取らない。『ドニ・パシュレ』 (Domaine Denis Bachelet)、『デュガ』 (Domaine Claude Dugat) のワインを推奨する」
「マゾワイエール・シャンベルタン」 (Mazoyeres-Chambertin)
「隣の『シャルム・シャンベルタン』を名乗ることも可。『マゾワイエール・シャンベルタン』の名前で流通しているのはごく少数。『ヴージュレ』 (Domaine de la Vougeraie) のワインは稀少ワインの一つ。」
「グリオット・シャンベルタン」 (Griotte-Chambertin)
「畑は、やや凹状になっており、ぶどう畑は、周りの熱を集めているように思える。少数の評判の良い生産者によって造られていることから、ほとんどのボトルが探し出す価値がある。平均して質は、ジュヴレ・シャンベルタンの他の Grand Cru (特級畑) よりも遥かに高い。」
「ラトリシエール・シャンベルタン」 (Latricieres-Chambertin)
「『トリシエール』はラテン語の『不毛の地』に由来するが、その名の通り、土壌は非常薄い。」「酸味が良く残り、ワインに清涼感とフィネスを与えている。」「ここでは『ルロワ』 (Domaine Leroy) が傑出した生産者である。」
「マジ・シャンベルタン」 (Mazis-Chambertin)
「一般的に、堅牢で男性的なワイン。アロマはスグリなどの赤いベリー系果実に、バラやスミレ、スパイスなどが混じる。」「アロマと力強さを合わせ持つ魅惑的なワインである。」
「リュショット・シャンベルタン」 (Ruchottes-Chambertin)
「表土が痩せた土地の為、ワインは色が明るくエレガントなタイプになる。長超熟型のワインを造る『アルマン・ルソー』 (Domaine Armand Rousseau) は、リュー・ディ、『クロ・デ・リュショット』 (Clos des Ruchottes) を単独所有、オリエンタルなスパイスや赤い小果実のアロマを、冷涼な気候がもたらす清涼感が引き立てるワインを造る。」
ジュヴレ・シャンベルタンにある 26 区画の 1er Cru (一級畑) の中で、優れた区画として、「クロ・サン・ジャック」 (Clos Saint-Jacques)、「カズティエ」(Cazetiers)、「クロ・デ・イサール」 (Clos des Issarts)、「ベル・エール」 (Bel Air)、「レ・コルボー」(Les Corbeaux) が挙げられます。
「クロ・サン・ジャック」 (Clos Saint-Jacques)
「『クロ・サン・ジャック』 (Clos Saint-Jacques) は、常に吹き付ける冷たい風を高さ 2 m の壁で囲み、ぶどう樹を南東向きに植えていることで防ぎ、高い品質を維持することが出来ている。この特別な『サン・ジャック』 (Saint-Jacques) は、5 人の生産者によって所有され、どれも非常に質の高いワインを造り出している。」
「カズティエ」 (Cazetiers)
「長く熟成できるワインを生み出す優れたぶどう畑である。私は、『クロ・サン・ジャック』(Clos Saint-Jacques) の次に高く評価している。ここの畑の生産者は強く団結している。」
「クロ・デ・イサール」 (Clos des Issarts)
フェヴレ (Domaine Feiveley) の単独所有畑 (モノポール)
「『フェヴレ』 (Domaine Faiveley) が『ベルナール・デュフール』 (Bernard Dufour) の描いたぶどう絵のラベルでワインを出している。あらゆる努力を払ってでも見つけたいワインの 1 本。」
「ベル・エール」 (Bel Air)
「『美しい風』という意味の名前は、爽やかな風がいつも吹いている所であることから付いたのだろう。Grand Cru (特級畑) 『シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ』 (Chambertin-Clos-de-Beze)と『リュショット・シャンベルタン』 (Ruchottes-Chambertin) に挟まれた好立地にある。ワインは新鮮なスタイルで美味しい。」
「レ・コルボー」 (Les Corbeaux)
「『マジ・シャンベルタン』(Mazis-Chambertin) に接している。この畑から造り出されるワインは、秀逸なものばかりである。」
また、素晴らしい 1er Cru (一級畑) として、何れも単独所有畑 (Monopole) の「クロ・デ・ヴァロワイユ」 (Clos de Varoilles)、「ラ・ロマネ」 (La Romanee)、「ラ・ボシエール」 (La Boussiere) などが挙げられます。
![ジュヴレ・シャンベルタン クロ・ド・ベーズ ジュヴレ・シャンベルタン クロ・ド・ベーズ](https://www.lesbourgeons.co.jp/pic-labo/GIV2.png)
ローマ時代を偲ばせる例として、1er Cru (一級畑) 「ラ・ロマネ」 (La Romanee) が、ローマ時代の名残を区画名にとどめています。
長い歴史、比類なき名声
ジュヴレ・シャンベルタンのワインが比類ない名声を得るきっかけとなったのは、630 年に「ブルゴーニュ大公」が「ベーズ修道院」 (Beze Abbey) に寄進して開墾された「クロ・ド・ベーズ」 (Clos de Beze) の畑から出来るワインが極めて高い名声を得ていたことにあります。
この名声を聞き、13 世紀にジュヴレ村にやってきた農夫のベルタンは、「クロ・ド・ベーズ」のすぐ隣に土地を買って開墾し、素晴らしいワインを造ることに成功します。
やがて、その畑は「ベルタンさんの畑」という意味の「シャン・ド・ベルタン」(Champs des Bertin) と呼ばれ、やがて「シャンベルタン」 (Chambertin) になります。
また、「シャペル・シャンベルタン」 (Chapelle-Chambertin) の区画名は、フランス革命まで「ベーズ修道院」の教会があったことに由来します。
「シャンベルタン」は、18 世紀には、ルイ 16 世が愛飲し、19世紀になると、ナポレオンが「シャンベルタン」しか飲まないほど溺愛し、その名声は不動のものとなります。
そこで、ジュヴレ村の村長は、村の評判を高めるため、村名そのものに「シャンベルタン」の名をつけ加えることを考えます。
1848 年に、村名を「ジュヴレ・シャンベルタン」 (Gevery-Chambertin) に変更し、同時に Grand Cru (特級畑) にも「シャンベルタン」を付け加えました。
現在でも、「シャンベルタン」と「シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ」は、世界的な名声と人気を誇る高貴なワインというだけでなく、「ブルゴーニュの赤ワイン全体の基準となるワイン」 (ヒュー・ジョンソン氏) と称賛されています。
![ジュヴレ・シャンベルタンの畑 ジュヴレ・シャンベルタンの畑](https://www.lesbourgeons.co.jp/pic-labo/GIV3.png)
傑出した生産者一覧
・アルマン・ルソー (Domaine Armand Rousseau)
「もう何世代も前から、そして特に 2、3 世代前から、バイヤーの間に言い伝えられてきたことがある。Grand Cru (特級畑) 『シャンベルタン』 (Chambertin) と『シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ』 (Chambertin-Clos-de-Beze) で最も安心できる極上ワインを買いたいのなら、ラベルに『ドメーヌ・アルマン・ルソー』 (Domaine Armand Rousseau) と書いてあるものを探せ、と。」
・シルヴィ・エモナン (Domaine Sylvie Esmonin)
「ここは、ジュヴレ・シャンベルタンにある、ジュヴレ・シャンベルタンのためのドメーヌである。ジュヴレのラベルを身に着けたものの中でも最も偶像的なもの、1.6 ha の『クロ・サン・ジャック』 (Clos Saint-Jacques) である。しかし、それはまた、ジュヴレの最高の表現をヴィエイユ・ヴィーニュの中に持っている。」
・フーリエ (Domaine Fourrier)
「ドメーヌ・フーリエのワインは、かなり納得のいく価格だ。ジュヴレ・シャンベルタンでは、私は、2つの美しく造られた、しかし対照的な 2 つの 1er Cru (一級畑) を紹介したい。『グーロ』 (Les Goulot)、『シャンポー』 (Les Champeaux) である。かなり異なった性格のワインであるが、どちらも、ジャン・マリー・フーリエの醸造法の透明性を雄弁に物語っている。」
・ピエール・ブレ (Domaine Pierre Bouree)
「多くの人が『果実味の粘着性』に価値を置く世界にあって、ピエール・ブレは、どこか時代錯誤できである。このドメーヌは、ワインをワインたらしめるものとして造っている。」
・ドミニク・ガロワ (Domaine Dominique Gallois)
「彼のワインは、誠実で、念入りに造られ、ジュヴレ・シャンベルタンらしいタンニンのつかみがある。私はそれが大好きだ。」
・ジョセフ・ロティ (Domaine Joseph Roty)
「彼らのワインは、『マルサネ』 (Marsannay) であれ、『マジ・シャンベルタン』 (Mazis-Chambertin) であれ、まったく個性的で、濃密で、張り詰めていて、衝撃的で、非常に魅惑的である。」
・ピエール・ダモワ (Domaine Pierre Damoy)
「『ブルゴーニュ・ルージュ』でさえも、このドメーヌがどれほどの真価を遂げたかわかる。しかし『マルサネ・ロンジュロワ』 (Marsannay Longeroies) と『ジュヴレ・シャンベルタン、クロ・タミゾ』 (Gevery-Chambertin, Clos Tamisot) は、真に秀逸なワインだ。」
・エレスティン (Domaine Heresztyn)
「新世紀に入ってからは、深みのある個性豊かなワインばかりである。ジュヴレ・シャンベルタンの 1er Cru (一級畑) の中に本当に興味深いものがある。特に『レ・コルボー』 (Les Corbeaux) と『ラ・ぺリエール』 (La Perriere)。」