シャンボール・ミュジニーは、優雅さとフィネスを兼ね備え、絹やレースのような感触、洗練されたボディを備えたワインを生み出し、しばしば「女性的」「官能的」という形容詞を用いて表現され、世界的な人気と名声を誇るブルゴーニュを代表する銘醸地の一つです。
シャンボール・ミュジニーは、周囲のアペラシオンよりも標高が高く冷涼であり、石灰岩の多い土壌であることが、繊細で女性的なワインが生産される要因と言われています。

シャンボール・ミュジニーは、村の中心を流れるグローンヌ川が、激しい雨によって度々氾濫し、河岸を定期的に崩壊させたことから、シャン (平野) ・ブヤーン (沸き立つ) が変化してシャンボールになったと伝えられています。
コート・ド・ニュイ地区にある人口 300 人のシャンボール・ミュジニー村は、村落の背後に、白い石灰岩の切り立った断崖がある地形が特徴的です。
ぶどう畑の土壌も、粘土質の多い北端の Grand Cru (特級畑) 「ボンヌ・マール」周辺以外、石灰質を多く含みます。
村内は、傾斜の為に狭く曲がりくねった坂道が多く、所々つづら折りの通りが見られ、起伏や変化のある美しいぶどう畑が続いています。

シャンボール・ミュジニーは、世界中に名を知られた 2 区画の Grand Cru (特級畑)、24 区画の 1er Cru (1級畑) を擁し、1er Cru (一級畑) を挟んで、アペラシオンの南・北端に 2 つの Grand Cru (特級畑) があります。

シャンボール・ミュジニーの Grand Cru （特級畑） 「ミュジニー」 (Musigny)、「ボンヌ・マール」 (Bonnes-Mares) は、世界的な人気と名声を誇る傑出した区画であり、誰もが憧れるワインを生み出します。
1er Cru (一級畑) も、「レ・ザムルーズ」(Le Amoureuses)、「レ・シャルム」(Les Charmes) など、Grand Cru (特級畑) に比肩するワインが生み出される優れた区画があります。

シャンボール・ミュジニーは、赤ワインの生産比率が、ほぼ 100% であり、ごく少量の白ワインを除き、赤ワインを生産する産地です。

シャンボール・ミュジニーの赤ワインは、「コート・ド・ニュイで最も女性的」と言われ、「絹やレースのような感触が口蓋を満たし、洗練されたボディは、堅固で長命な骨組みを持っている。酸が豊かで、滑らかさと結びついた、溶けて優しいボディを形づくり、優雅さとフィネスを兼ね備えている。」 (フランス AOC ワイン辞典) と評価されています。

シャンボール・ミュジニーの白ワインは、Grand Cru (特級畑) 「ミュジニー」にある単独所有畑 (モノポール) である 0.6 ha の区画から、「ジョルジュ・ド・ヴォギュエ」 (George de Vogue) が「ミュジニー・ブラン」として生産する稀少なワインです。
25 年以上のぶどう樹からのワインのみを Grand Cru (特級畑) とする方針のヴォギュエは、1992年に若い樹に植え替えた為、1994年~2014年の間は、「ブルゴーニュ・ブラン」として販売していました。

「ミュジニー」 (Musigny)
「ミュジニーはシャンボールの最高中の最高のワインで、1855年のラヴァージュ博士の格付けでも、シャンボールでただ一つのテット・ド・キュヴェ (最上級) に認定されている。そのワインは、飲む人を異次元の世界へ引き込む能力において、ラ・ターシュ、ラ・ロマネ、ラ・ロマネ・コンティに比肩しうる。」

「ボンヌ・マール」 (Bonnes-Mares)
「ボンヌ・マールのワインには、シャンボールの家系を思わせる似たところがない。ワインは、どれもモレ・サン・ドニで生まれたワインに違いないと思わせるものを持っている。多くのボンヌ・マールのワインは、若い時ドシンとくる強烈さを有しているが、青年期を過ぎると、信じられないくらいの魅力を醸し出す。まさにその地位にふさわしい Grand Cru (特級畑) である。」

シャンボール・ミュジニーの 24 区画の 1er Cru (一級畑) では、優しいタンニン、優雅さとフィネスを兼ね備えたワインが生産されています。
とりわけ評価の高い区画として、「レ・ザムルーズ」 (Les Amoureuses)、「レ・シャルム」(Les Charmes) が挙げられます。

「レ・ザムルーズ」 (Les Amoureuses)
「『ミュジニーの妹』と良く表現される通り、両者の味わいはよく似ている。」
「アタックはシルキー、味わいは『ミュジニー』に似て女性的かつ官能的。」
「他のシャンボール・ミュジニーにはない素晴らしい芳香を持つ。」

「レ・シャルム」 (Les Charmes)
「シャンボールの 1er Cru (一級畑) の真髄を示すようなワインがいくつか生み出されている。」
「フランス語で『魅了する』というクリマ名の通り、実際の味わいも繊細・エレガントで、レ・ザムルーズとタイプが似ているが、ストラクチャーはこちらのほうが強い。」

他の 1er Cru (一級畑) では、アペラシオン北端部、ボンヌ・マール周辺部の「レ・フュエ」 (Les Fuees)、「レ・クラ」(Les Cras)、「レ・サンティエ」 (Les Sentiers)、「レ・ボード」 (Les Baudes)、アペラシオン中央部の「レ・フスロット」 (Les Feusselottes)、「レ・グロゼイユ」 (Les Groseilles)、アペラシオン南端部、ミュジニー周辺部の「レ・シャビオ」 (Les Chabiots)、「ラ・コンブ・ドルヴォー」 (La Combe d’Orveau) などが素晴らしい区画に挙げられます。

中世に入ると本格的に開墾され、「ベネディクト派修道会」によって、現在の区画 (クリマ) の原型が出来上がりました。
シトー派修道会の文献によると、16世紀には、「シャンボール・ミュジニー」を名乗るワインが存在し、高い評価を得ていました。
村には、シャンボール・ミュジニーの貴族、ヴォギュエ家の祖先、ジャン・モアソンが 16 世紀に寄進した「サント・バルブ教会」 (Sainte-Barbe Church) があり、美しいフレスコ画とステンドグラスが有名です。

シャンボール・ミュジニーの土壌は、石灰質を多く含みますが、北端部の「ボンヌ・マール」周辺は、隣接する「モレ・サン・ドニ」と同様に粘土質が多く、堅固な骨組みと力強いワインが生み出されます。
南端部の「ミュジニー」周辺は、石灰岩の岩盤に、割れ目から入った水が凍って多くの亀裂があり、ぶどう樹の根が亀裂を通じて地中深く伸び、そこからミネラルを多く吸収する為、繊細でフィネス溢れるワインが生み出されます。

・ギレーヌ・バルト (Domaine Ghislaine Barthod)
「ギレーヌは、温かく魅力的であるだけでなく、格付けを無視して比較しても、シャンボール・ミュジニーの中でも、最高と言えるワインを造り出す能力の持ち主である。」

・ジャック・フレデリック・ミュニエ (Domaine Jacques-Frederic Mugnier)
「そのワインは、いつ飲んでも実に美味しい。若い時でさえ。しかし、超越的感覚を体験しようと思うなら、少なくとも 20 年間はそっとしておかなければならない。」

・ジョルジュ・ルーミエ (Domaine Georges Roumier)
「ボンヌ・マール Grand Cru (特級畑) は、さらに稀少なワインである。それは、ドメーヌにとってだけでなく、コート・ドール全体にとって、まさに偶像的なワインである。」

・ジョルジュ・ド・ヴォギュエ (Domaine Comte Georges de Vogue)
「ヴォギュエは、ブルゴーニュのドメーヌの中で、最も重要なものの一つである。そのドメーヌは、シャンボール・ミュジニーの頂点に君臨し、赤の Grand Cru (特級畑) ミュジニーの大部分を所有している。」