サン・ロマン (Saint Romain)

コート・ド・ボーヌの奥座敷
サン・ロマンは、オーセイ・デュレスを西に抜け、谷の行き止まりに連なる石灰岩を戴く断崖の麓にあり、「谷の奥に位置するコート・ド・ボーヌの奥座敷」 (ワイナート誌) と言うに相応しいアペラシオンです。
コート・ドールの村名呼称格付け連なる地域の最西端に位置し、遠目でもすぐにそれとわかる独特な景観のアペラシオンは、コート・ドールからは少し離れ過ぎているように思え、どちらかといえば、オート・コート・ド・ボーヌの一部とも言える位置にあります。
村名格付けが認められたのは、ようやく1947年になってからのことで、村名格付けの付与が遅れたのは、AOC委員の中で意見が分かれた為だろうと言われています。
サン・ロマンのぶどう栽培面積は 93ha と小さなアペラシオンで、生産量は、赤ワインが45%、白ワインが55%と、アペラシオン全体では、やや白ワインの生産が多いです。
サン・ロマンのぶどう畑は、標高 350~420m と高地にあるために平均気温が低いものの、入り組んだ谷が風を遮って、熱を保つ役割を果たし、高地の割に穏やかな気候から、ぶどうの成熟が促進されます。
サン・ロマンの表土は、粘土質と泥質で構成され、厚さ数十センチしかなく、そのすぐ下に、泥灰岩と石灰岩の混ざった「サン・ロマン石灰岩」の母岩層があります。
粘土質と「サン・ロマン石灰岩」の地層は、ミネラルに富んだシャルドネの生育に最適な土地であり、白ワインの潜在能力が高い産地と言われています。
また、サン・ロマンは、ワイン樽の製造業者である「トルネリー」 (Tonnelerie) が多く、有名なワイン樽製造業者のフランソワ・フレール (Francois Freres) が拠点にしている村であり、村では屋外に自然乾燥しているオーク材が積まれているのを見ることができます。

「サン・ロマン石灰岩」の母岩を持つミネラル豊かな土地は、白ワインの生産に最適!!
熟成向きなワインを生み出す
サン・ロマンに 1er Cru (一級畑) は無いものの、村名呼称ワインは、幾つかの区画に分かれており、主要な優良区画に名称が付いています。
主な優良区画 (クリマ) として、「プイヤンジュ」 (Pouillange) 「ラ・ペリエール」 (La Perriere) 「スー・ル・シャトー」 (Sous le Chateau) 「スー・ラ・ヴェル」 (Sous la Velle) 「スー・ロシュ」 (Sous Rouches) 「ル・ジャロン」 (Le Jaron) が挙げられます。
サン・ロマンは、赤・白ワインとも、早くから飲めるワインですが、熟成により真価を発揮するブルゴーニュの古典的なスタイルのワインが主流です。
白ワインは、ミネラルが豊かで、熟成と共に円くなり、まろやかさが増して真価を発揮します。
赤ワインは、小さな赤い果実の芳香を備え、4~5年の熟成を経て、タンニンが繊細でエレガントになります。
赤白ワインとも、10年超の熟成に耐え得ると言われています。
ミネラル豊かな「サン・ロマン石灰岩」の母岩を持つ土壌は、シャルドネに最適な為、とりわけサン・ロマンの白ワインは、ゆっくりとファンを掴み人気が高まりつつあります。
サン・ロマンの白ワインは、ここ20年くらい温暖な年が続いたこともあって品質が安定し、「その酒質は、コート・ドールの平地から生まれる肥満タイプのブルゴーニュを遥かに凌いでいる。」 (ヒュー・ジョンソン氏) と評価されるようになりました。

ローマ時代から続くワイン造り
ワイン造りは、ローマ帝国統治時代から始まっていたと考えられ、サン・ロマン村の名称は、中世初期から記録が残っています。
村の中心には、サン・ロマンのワイン造りを発展させたクリュニー派修道会のサン・ロマン教会 (Eglise de Saint-Romain) があり、鳥がぶどうとエスカルゴを食べているモチーフの彫られた説教壇が有名です。
サン・ロマン村は、フィロキセラが襲うまでは、耕作可能な土地はすべてぶどう畑に充てられるほどワイン造りが盛んでしたが、フィロキセラ禍によりぶどう畑は荒廃し、現在は、高級ワインに適した畑のみが復興しています。
