フィサン (Fixin)
堅牢な「冬のワイン」が生産される
人口 800 人のフィサン村は、「マルサネ」が AOC 昇格するまで、コート・ド・ニュイ地区最北端の村でした
ディジョンから近いにもかからず、都会の喧騒とは無縁で、静かで落ち着いた村は、安らぐ景観を有しています。
フィサン村は、フィエ村と合併して出来た村で、フィエ村には、902 年に建設された有名なロマネスク様式の「聖アントワーヌ教会」(Eglise Saint Antoine) があります。
ナポレオンの皇帝近衛兵司令官で熱烈な崇拝者だったクロード・ノワゾが 19 世紀に建設した「ナポレオン博物館」と森林公園があり、すぐ隣のぶどう畑は「クロ・ナポレオン」 (Clos Napoleon) という区画名が付いています。
また、博物館にある 19 世紀の彫刻家「フランソワ・リュード」作の「目覚めるナポレオン像」が有名です。
フィサンは、東向きの斜面上部に 5 区画の 1er Cru (1級畑) があり、色が濃く、目の詰まったタンニンと力強いストラクチャーが特徴の長期熟成に向くワインが生産されています。
フィサンは、赤ワインの生産比率が 97% であり、白ワインの生産は僅かです。
フィサンのワインは、「冬のワイン」と呼ばれ、堅牢なストラクチャーのワインは、熟成により真価を発揮すると言われています。
ワインのスタイルは、隣村のジュヴレ・シャンベルタンのような男性的な力強さを感じるものであり、酸が豊かで複雑さを備えた洗練されたスタイルのワインです。
フィサンの銘醸区画
「クロ・ド・ラ・ペリエール」 (Clos de la Perriere)
ジョリエ (Domaine Joliet) の単独所有畑 (モノポール)
「面積 5 haの、ジョリエ家の単独所有畑である。しかし、ぶどう樹が植えられているのは、そのうちの 4 ha だけで、残りは、邸館、その他の建物、庭園になっている。同じく、1er Cru (一級畑) のシャルドネの小さな畑を除いて、全てピノ・ノワールが植えられている。フィサンで、凝縮感、フレーバーの奥行きの深さ、愛撫されるような質感を求めるなら、ここが村で唯一の場所である。」
「クロ・デュ・シャピトル」 (Clos de Chapitre)
ギ・エ・デュフルール (Domaine Guy and Yvan Dufouleur) の単独所有畑 (モノポール)
「礫の褐色石灰岩と微粒子粘土の混合土壌で、偉大なワインの生産に非常に適した典型的なテロワールとなっている。ギ・エ・デュフールの単独所有畑だが、一部はネゴシアンに販売している。」
「クロ・ナポレオン」 (Clos Napoleon)
ピエール・ジェラン (Domaine Pierre Gelin) の単独所有畑 (モノポール)
「往時の所有者が、皇帝の栄誉に因んで名付けた『クロ・ナポレオン』は、『フィサン最高の畑』と謳われ、野性的で力強く芳醇なワインが生み出される。」
シトー派修道会、ナポレオン
フィサンにおけるぶどう栽培は、11 世紀頃に盛んになり、教会勢力によるぶどう畑の開墾・所有が進みました。
例えば、「シトー派修道会」が 1er Cru (一級畑) 「クロ・ド・ラ・ペリエール」を所有、シャンパーニュ地方にある「ラングル教会」が同じく 1er Cru (一級畑) の「クロ・デュ・シャピトル」を所有していました。
フィサンの殆どどこかからでも見ることのできる、採石場のあった丘の上に立つ村落を見下ろす古びた壮大な建物は、「クロ・ド・ラ・ペリエール」の荘園邸館「マノワール・ド・ラ・ペリエール」 (Manoir de la Perriere) であり、1140 年にシトー派修道会が建設しました。
そして、教会勢力が所有していたぶどう畑の内、1er Cru (一級畑) の幾つかの区画は、単独所有畑 (Monopole) として、現在までぶどう栽培が引き継がれています。
例えば、フィサンの代表的な 1er Cru (一級畑) である「クロ・ド・ラ・ペリエール」は、荘園邸館が 1622 年にユグノー派によって焼き討ちにあうまで、シトー派修道会の修道僧がぶどう畑を耕作していました。
その後、紆余曲折を経て、1853 年に、現在の所有者であるジョリエ家が「クロ・ド・ラ・ペリエール」のぶどう畑と荘園邸館を購入し、そのまま単独所有畑 (Monopole) として所有しています。
現・当主のベニーニュ・ジョリエは、「この土地には、シトー派修道僧を惹きつける何か磁力のようなものがあり、それを彼らは知っていたに違いないと確信している。」と言います。
彼はまた、「この土地は常に、今日の Grand Cru (特級畑) に匹敵する力を持つフィサン最上の土地と考えられてきたという事実がある。」と歴史的に評価の高い傑出した区画であると説明しています。
また、フィサン村は、ナポレオンが逗留した村と言われ、ナポレオンを崇拝していたクロード・ノワゾが軍隊を退役後、「ナポレオン博物館」と森林公園を開設しました。
クロード・ノワゾは、博物館の隣にぶどう畑を拓き、皇帝の栄誉に因んで「クロ・ナポレオン」 (Clos Napoleon) と名付けました。
クロ・ナポレオンは、極めて優れた区画であり、「フィサン最高の区画」と評価され、フィサンを代表する 1er Cru (一級畑) のひとつに位置づけられています。
傑出した生産者一覧
・ヴァンサン・エ・ドニ・ベルトー (Domaine Vincent et Denis Berthaut)
「私は大胆に次のように言いたい。フィサンで最も上質の、最もエレガントなワインを造り出しているのは、ドニだ、と。ラルロがデュジャックのスタイルを踏襲しているのと同様に、ベルトーは、あえて言うなら、ジャック・フレデリック・ミュニエの、高尚なエレガントさを踏襲している。」
・ジョリエ (Domaine Joliet)
「ジョリエの単独所有畑 (Monopole) である『クロ・ド・ラ・ペリエール』から造られるワインは、何世代も前から、ブルゴーニュ全体でも最上のワインのひとつと見なされてきた。同じ地位を享受できているのは、『シャンベルタン』と『シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ』くらいであり、『クロ・ド・ラ・ペリエール』は、それらと同じ価格で販売されている。」